まだ姑と同居していたときのことです。近くに住む友人が遊びに来たことがありました。友人は占い師をしています。それが気に食わない姑は、彼女がくるなり同席し、なんだかんだと文句をつけ始めました。
友人はにこにこ笑ってやり過ごしていました。やがて、話題は私の妊娠話にうつりました。私は現在妊娠中。性別は女の子らしいとお医者様に言われています。
「私は跡取りをこの手に抱きたいのよ!」
姑はそう叫びました。友人はにっこり笑って言いました。
「お姑さんは、お孫さんを抱くことはできないと思いますよ」
友人の自信に満ちた言葉に、暴言を吐いていた姑は真っ青になりました。それでその日は終わりました。姑はそれまでも私に対して数々の暴言を吐いていました。
「オンナを生むなんて役立たずだ」
「無駄飯食い」
「男が埋めないならとっとと別れろ」
そんな中、たまたま夫がお風呂から出てきた時に、
「お前みたいな女から生まれる娘なんて、お前同様ろくなもんじゃない」
と姑が言ったのを聞きつけたことがありました。もちろん、大喧嘩になりました。そして、私たちは姑の元を離れ、新しい家で過ごし始めました。
その後孫が生まれました。女の子でした。姑には知らせていません。というより、姑は我が家の新住所すら知りません。姑は誰彼ともなく泣きつきはじめたそうです。
ある日、お節介焼きの人から我が家の新住所を聞きだした姑は、当然のように我が家に押しかけてきました。娘は幼稚園に行っていて留守でした。姑は強引に部屋に入り込むと、父の位牌を盗みだし「返して欲しければ孫ちゃんに会わせろ!」とそのまま実家に逃げ帰ってしまいました。
翌日夫と共に実家に赴き、位牌を返すように言いました。ところが、姑は譲りません。
「孫はどうした! 会わせないなら返さない!」
切れた夫が家捜しをはじめました。しかし、どうしても見つかりません。問い詰めたても、涼しい顔でこう言いきります。
「もう捨ててきた。早く取りに行かないと大変なことになるかもね。どこに捨ててきたか知りたくないの?」
真っ青になった私。怒りが頂点に達した夫は、姑の頬を殴りつけました。それでも姑は、位牌を捨てた場所を言いません。殺してやりたいと本気で思いました。
と、そこに件の友人から携帯に電話がかかってきたのです。「今取り込んでるから」という私に友人が言います。
「それはお父さんの位牌の件じゃない?」
驚く私に友人は「下手なことをしないように。今から行くから」と告げました。姑と夫にそれを伝えると、二人とも呆然。特に姑は友人を覚えているらしく真っ青になっていました。
程なくして友人が到着しました。手には父の位牌を持っています。家に入ってもらうと、友人はツカツカと姑の前に立たちました。
「不思議でしょ? どうして私がご位牌を持ってるの?って思ってますよね? 簡単ですよ。お父さんが私の夢に出てきてくれたからです。」
友人は私が結婚する前、よく実家に遊びにきていたため父と面識がありました。父の葬儀にも駆けつけてくれたほどです。私達はびっくりして声も出ませんでした。姑は「ヒッ」とか言っていました。
「お父さんがね、昨日私の夢に出てきて、自分はここにいるから助けて欲しい、位牌を持っていってくれないか、と仰ったんですよ。嘘じゃないことはあなたが一番良くご存知ですよね?」
腰を抜かすトメを見ながら、私は友人の言葉に泣きそうでした。
「お父さん、あなたのことをとてもお怒りです。娘を苛めるだけじゃ飽き足らず、可愛い孫にまで迷惑をかける、と。 分かりますか? お孫さんたちは亡くなったお父さんに守られてるんです。ついでにわたしもついてます! 次にあなたが手を出したときには、どうなるかわかりませんよ!」
姑は腰を抜かし、そのまま失禁しました。「二度と来るな」と怒鳴る夫。その後、私たち夫婦と友人は、実家を後にしました。
位牌が捨てられていたのはうちの近所にある山裾の藪の中だったそうです。人が倒れてても気付かないようなところだったので、姑が腰を抜かしたのも無理はなかったと思います。友人は帰り際に私たちに言いました。
「これ以上手が出せないようにする、とお父さん言ってくれてるから 近々あなたたちにとっていい意味で家を移る事になると思うよ。」
その言葉通り、数日後、主人の栄転で首都圏に引っ越すことが決まりました。 もちろん、父の位牌も持っていきます。姑には引越し先も教えていませんし、二度と来ることはないでしょう。友人には本当に感謝です。 そして、友人の予言どおり孫に会えていない姑には、ただただ苦笑いするしかありません。