中学生の時、学校から帰宅したら、居間に見たことのない初老の女性が座っていたことがありました。女性はテレビを観ていて「いつもお世話様です」みたいに挨拶をしてきます。こっちも挨拶を仕返しましたが、誰だかわかりません。
「わたしはずーっと待ってるのに、どこいっちゃったのかしらね」
なんて和やかな表情で言っている女性に対して、特にかける言葉も見つからなかったので、とりあえずお茶だけ出して自分の部屋に入りました。
それから2時間以上経った頃でしょうか。居間の方から「どうしたんですか!!?」という母親の大声が聞こえてきました。
覗いてみると、さっきの初老の女性と母親が押し問答のような言い合いをしています。が、話は微妙にかみ合っていません。
母に聴いたら、こんな人は知らないし会う約束もしてないらしい…。埒があかないし不気味なんで警察に通報して来てもらいました。そこで分かったことなのですが、その人はうちから徒歩20分くらいの隣町に住んでる、認知症を患ってる人だったそうです。
早朝から行方不明になって、家族が捜索願を出していたとのことで、すぐにその家族がうちに来て、半泣き状態でその女性を引き取っていきました。
それにしても、彼女が一体どこから入ってきたのかは今も謎のままです。家の玄関は鍵が掛かっていたし、考えられるのは、風呂場の小窓か2階のベランダ。ただ、老女がこんなところから自力で入ってくるとは、ちょっと考えづらいのです。