近所にクソ婆ぁが住んでいました。婆ぁは騒音を立てるわ、危険運転をするわ、で近所の人たちから徹底的に嫌われていました。
なにしろ、運転が下手過ぎてあちこちにぶつけるのです。ほんと、重大な事故を起こしていないのが奇跡というか、免許取れたのが奇跡っていうレベルの危険運転。みんなぶつけられていましたから、嫌われても当然だったと思います。
ある日、俺がスーパーまで買い物に行こうと車で大通りまで出たところ、前方にクソ婆ぁの白塗りクラ〇ンを発見しました。ぶつけられたら嫌なので俺は車間距離を取りました。
信号が黄色から赤に変わるタイミングで婆ぁの車が交差点に侵入しました。それとほぼ同時に反対の信号が青になり、婆ぁのクラ〇ンは、飛び出してきたベ〇ツと衝突。
相手はヤクザでした。
クソ婆ぁが嫌いな俺はベ〇ツの運転手の味方をしました。タイミング的にはベ〇ツが若干フライングしていたかもしれません。けど、そこは知らないふりをして、クソ婆ぁが赤信号で交差点に侵入したと警察には証言しました。
ちなみにそのときはまだ相手がヤクザとは知らなかったのです。たんに物腰の柔らかいポッチャリした親父だと俺は思っていました。だから、その親父に自分の連絡先をメモって「何か証言しなくちゃいけなくなったら連絡してください」と言ってしまいました。
何かがおかしいぞと思い始めたのはそれからです。警察から呼ばれること5回、現場検証の立ち会いも2回。あまりに警察からしつこく聴取されるので、さすがに俺も変だぞと思いました。
その後、近所の噂を耳にした母から、クソ婆ぁの事故相手はヤクザだということを初めて教えられました。婆ぁは相当ヤクザに脅されているようでした。
一人暮らしだった婆ぁの家には、連日のようにヤクザが攻勢をしかけてきます。ちょうどこの頃、俺はそのヤクザさんに呼び出され「何かあったら宜しく」と現金20万円を手渡されました。ぶっちゃけ断ることなんて出来ませんでした。
そして、事故から1ヶ月ほど過ぎた頃、婆ぁの家は文字通りヤクザに乗っ取られ、売却されてしまいました。
クソ婆ぁが消えてから何年もたったけど、いまだにヤクザからの連絡はありません。