夜9時くらい、帰宅してすぐにインターホンが鳴りました。玄関を開けると、40代くらいと思われる女性が立っています。宗教の勧誘だったら面倒だな、と思いつつ「なんですか?」と聞くと、女性は部屋を覗こうとしながら、
「ここってス○ップの木村タ○ヤさんのお宅ですか?」
確かに俺は木村という苗字で表札も出していたが、木村タ○ヤのワケがありません。驚きながら「いや、違いますけど…」と答え、ドアを閉めようとしました。すると女は閉まりかけのドアを押さえ目を見開いて叫びだしたのです。
「本当に? 隠してませんか? 本当はタ○ヤいるんでしょ!?」
さらに女は、部屋の中に入り込んで来ようとするではありませんか。慌てて、女を外に押し出そうとすると今度は、
「触らないで! タ○ヤー! いるんでしょ? タ○ヤー!」
と暴れだします。俺はもう何がなんだかわからなくなり「ヤメロ、警察呼ぶぞ!?」と怒鳴りました。その一言で、女はおとなしくなり逃げるように帰って行きました。
翌日、帰宅するとアパートの入り口に昨日の女とその娘と思われる中学生くらいの女の子が立っていました。俺は驚きつつもダッシュで自分の部屋の前へ走り、急いで鍵を開けで部屋に飛び込もうとします。
娘が「タ○ヤに会わせて!」と叫んでいます。その隣には包丁を持った女が目を血走らせて、
「タ○ヤを出せ!!出さないと殺すっ!!」
と怒鳴っています。俺はすぐに施錠し5分ほどボー然としていました。それから、ようやく警察に電話しようと思いつき、その前に部屋の電気を付けカーテンを閉めようとしました。窓には、女と娘が張り付いていて中を見回していました。
「うわあぁぁ!」
俺はすぐに警察に電話しました。パニックになりながらも事情を説明すると、警察は「すぐに警官を向かわせるので施錠をし待っていて下さい!」と言ってくれました。その間も、女と娘は窓を叩きながら、
「タ○ヤに会わせろ!タ○ヤを出せ!!」
と絶叫しています。俺はトイレに逃げ込み、掃除用のブラシを握り締め震えていました。
5分ほどして警察官が駆けつけました。辺りが騒がしくなったかと思うと、また静かになりました。インターホンの音が聞こえます。
「木村さん? 警察です。もう大丈夫ですよ。」
俺は安堵感で崩れ落ちました。
その後、警察へ行き事情を説明しました。女は別の木村さん宅にも同じことをしていたらしく、逮捕されたそうです。娘は親戚に引き取られたとか。
俺? さすがに引越しました。