昔住んでたマンションで、屋台のヒヨコから大きくなった鶏のピーちゃんを飼っていました。当時、隣にはちょっとヤバ気のおばちゃんが住んでいて、たまにバルコニーの防火扉が蹴破られたりしていたので、私はビクビクしながら暮らしていました。
ある日、帰宅直前にうちの階を見上げたら、なぜかピーちゃんが隣のおばちゃんに抱かれているじゃありませんか。まったくわけがわからずに見ていると、おばちゃんはおもむろにピーちゃんを5階のバルコニーから放り投げました。
「あっ」と思った瞬間、ピーちゃんは白い羽を広げました。まるでスローモーションのようにぱたぱたぱた…と羽ばたいたのです。
が、もちろん鶏なので飛べるはずもありません。ただ、ソフトランディングしながら無事に着地はしました。私は泣きそうになりながら裏庭に走っていきました。そこには、コココーと鳴きながらスタスタ歩いてる無傷のピーちゃん。
おばちゃんは、キャンキャン吠えるマルチーズ抱きながら、ただ黙ってこっちを見下ろしていました。死ぬほど怖いと思いました。
あの、本気で殺す気でいる人間の顔が怖くて、いまでもたまに夢に見ます。
ちなみに、ピーちゃんはその後田舎のばーちゃんちに預けて、7、8年くらい生き、天寿を全うしました。