4歳の時の話です。実家は東北のど田舎だったんですが、近所で熊を飼っている家がありました。しかし我が家は、「肉食の熊はお前くらい簡単に全部食う。草食でも腕の一振りで殴り殺されるからな」などと父親に繰り返し脅されていたので、飼われているとはいえ、絶対に近付きませんでした。
ある時、近所の子供達で遊んでいると、最年長のA子が「熊を見に行こう」と言い出しました。
私はひとり、嫌だと抵抗したんですが、引きずって連れて行かれるはめに。しかし、その家の生垣を絶対に通ろうとしなかったので 「弱虫」と文句を言われました。残りの子供達は檻の側へ入っていきました。
そしてA子が無邪気に、花か何かを檻の中の熊に差し出した瞬間!熊が檻に体当たりしてきました。響き渡る悲鳴と飛び散る血…。
実は体当たりしたのではなく、熊がA子の食いつき、中に引き込もうとしたのです。みんながパニックに陥る中、私は泣きながら隣家(百メートルは離れていましたが)に助けを求めに走りました。A子は何とか保護され、駆けつけてきた狩猟会の人が熊を仕留めました。
結局、A子は片腕を食いちぎられてしました。大惨事から銃殺という衝撃的な思い出です。
しかし、先日。当時の話になった際に母が
「A子達がもっと強引だったら、あんたを檻の中に突っ込んでたかもね」
「あんたは小さかったから、入っただろうし」
などと言って、思わずぞっとしました。