学校の帰り道で起こった出来事が今でもトラウマになっています。
学校から自宅までの間はほぼ住宅地で、街灯はほとんどなく夜は真っ暗で人通りはありません。
僕はバスで通学していましたが、頑張れば徒歩でもいけるため、ダイエット目的でたまに歩いて帰っていました。
その日も、僕は暗い夜道を1人で歩いていました。
ふと、後方から自転車を漕ぐ音が聞こえてきました。
こっちは徒歩だし、すぐに追い越されるよな。
と思ったのですが、なぜかいつまで経っても追い越されません。
不思議に思い、わざとゆっくり歩いてみましたがやはり追い越される気配はありません。
自分のすぐ後ろにいる自転車が、自分の歩幅に合わせてついてきているのです。
僕は急に怖くなって、早歩きで先を急ぎました。
本当は振り返ったり走って逃げたかったのですが、何が相手を刺激するかわからないので気付かないふりをしてひたすら歩き続けました。
スピードを変えても自転車はぴったり後をついてきます。
しかたがないので進路を変えて、コンクリートの歩道から細いじゃり道のくだり坂に入りました。
じゃり道なら多少自転車の走行の妨げになるかと思ったからです。
もうそのあたりから小走りになっていました。
このままのペースで行けば自宅までは10分ほどで着きます。
その時、自転車のブレーキ音が聞こえました。
よかった、諦めてくれた。
僕はほっとしました。
が、次の瞬間、突然ガシャン!!という音が鳴り響いたのです。
予想外のことと恐怖で完全に固まってしまい、声も出ませんでした。
背後からは「すみません」という男の声。
恐る恐る振り返ると、すぐ目の前に男の胸がありました。
体が密着するくらいの距離。
これはもう死んだかもしれないと思いました。
ところが、いつまで経っても攻撃されません。
それどころか、男は体を密着させたまま「○○ってどこですか」とボソボソと呟いています。
僕はその体勢のまま、道順を教えました。
男は焦点が合わない様子でぼんやり聞いていましたが、急にガッと腕を掴むと僕に抱きついてきました。
「わからない~!ついてきて~!」
体を無理矢理離し構わず帰ろうとしますが、男は自転車を乗り捨てたままついてきます。
「この道をずっとまっすぐ行ったら交番があるのでそこで聞いて下さい」
と言っても「やだ~!こわい~!」とごねるのみ。
自宅を知られたら面倒なことになりそうなので、適当にまく事にしました。
自宅とは反対方向には母校の中学校があります。普通の生徒はとっくに下校している時間ですが、部活をしている生徒ならまだ残っているかもしれません。
僕は相手を引き離して、中学校の敷地に入りました。
予想通り、男は敷地には入って来ませんでした。
体育館ではまだ部活をやっています。
それを見てほっとしながら、僕は15分くらい時間を潰しました。
そして、そろそろいいだろうと思って校門を出ようとしたら、
自転車に跨る奴がいました。
ダッシュで裏口にまわって裏門を出ようとしたら、
そこにも自転車に跨る奴の姿が。
どうやら完全に待ち伏せされていて、諦める気はないみたいです。
僕は校門付近で待機する奴の姿を確認してから、ダッシュし、壁に隠れました。
案の定、奴は裏門へ走っていったのでそのまま校門を出ました。
奴がどこまで追ってくるかわからなかったので、自宅とは逆の方向にひたすら走りました。
そのうち車や人が頻繁に行き交う大通りにでました。
奴の姿はありません。
そこでやっと安心して僕は帰宅しました。
翌日、いつも通り学校へ向かいました。
が、ふと背後に人の気配を感じたのです。
急に体が震えて吐き気がしました。
背後にいた人は知らないサラリーマンでただ自分の横を通り過ぎていっただけでした。
それでも僕は怖くてたまらず、学校を休みました。
それ以来、自分の背後に同年代の若い男がいると怖くてたまりません。
顔馴染みの同級生と分かっていても近づかれると吐き気がします。