俺が小学生だった頃の話です。友達のAとBと一緒に、天体観測をすることになりました。場所はBの家の近所の神社の境内。
夏休み中だったのでBの家で一泊する事になり、10時頃までゲームをしてから、そろそろ行くかーと神社へ向かいました。
境内に入ると虫の声が少ししていただけでほとんど何も聞こえず、天体望遠鏡を設置して懐中電灯の明かりを消すと真っ暗になりました。最初は星座の名前を調べたりしてワイワイとやっていましたが、だんだん飽きてきました。
それで、そろそろ帰ろうかという事になり、ライトを探したのですが、どこにあるのか分かりません。「どこだっけ?」と手探りで探し始めると…。
どこからかコーン…コーン…という音が響きだしました。
なんだろう?俺たちは神社の鳥居をくぐって左手側の広場で天体観測をしていたのですが、音は右手側の林からしていました。音の方からは明かりが見えました。遠目でもよく分かる、白装束に身を包んだ人間でした。
俺は丑の刻参りを知っていたので焦りました。Bはよくわからないらしく、小声で「何あれ?」とか聞いてきます。叫びたい気持ちを抑え、やばそうなので戻ろうとBに言おうとしたその時。
Aが後ろから「おーい、懐中電灯あったぞー!」と叫びながら、懐中電灯のライトをぐるぐるとこちらに向けながら走ってくるではありませんか。
コーン…コーン…という音が止まりました。
バレた…終わった…。「逃げるぞ!!」と俺は叫びました。パニくったAは泣きながら付いてきました。しかしBは、「天体望遠鏡!!」と言って広場のほうに行ってしまいました。
鳥居を抜け階段下の駐車場まで逃げた俺達はBを待ちましたが、いつまで経ってもBはやってきません。戻ってBの親に言うべきか…自分の親に言うべきか…。
どうしようと思っていると、階段の上からBが天体望遠鏡を握りしめ、泣きながら降りてきました。その後ろには、手に蝋燭を持った白装束の女が…。
怯える俺たちに女はいきなり言いました。
「ごめんね」
女は号泣していました。
その後、落ち着いた俺たちに女は話しだしました。丑の刻参りをしていたが、俺たちに見つかり失敗したこと。そのあと大きな音がして、驚いて広場のほうに行くと、盛大に転んだBが傷だらけになっていたこと。
自分のせいだと思った女は、責任を感じ号泣してしまったそうです。
女はOLで、嫌な上司にいじめられており、その上司を呪うために丑の刻参りをしたとのことでした。話していると普通の女の人で、自動販売機の明かりで見たその顔はむしろ美人な人だという印象でした。
ちなみに、白装束だと思っていたのは、ただの白っぽい服でした。それから俺たちは、「もしBの怪我が酷かったら電話して」と、電話番号を貰いました。
一週間後、Bは何事もなく完治したので、女の人に一報入れようかということになりました。電話をすると、女が出て「あの時は本当にごめんね」と謝ってきました。俺は「気にしないでください」とだけ答えました。
それから、女は心底うれしそうにこう言ったのです。
「そうそう、あの時の呪い、効いたよ」