うちは田舎のかなり古い家で、ほんのちょっとだけ「異国の血が混じってる」のが自慢でした。
その関係もあって、母方のおばあちゃんが大事にしていた異国のおもちゃなんかが、母親にも受け継がれていました。
値打ちとかはよくわからないけど、おばあちゃんが大事にしてたものなので、母も丁寧な扱いをしてたのを覚えています。
十数年前、都会から疎開してきたバツイチ家族(ママと子二人と両親)がうちにあいさつに来ました。
この人たちは、子供をダシにして、家に上がりたがるようなタイプで、周囲から孤立している人たちでした。嫌だなと思いましたが、案の定、家に上がり込まれ、かなり迷惑しました。
それから数日後、同じ集落の人で、町でリサイクルショップをやっている旦那が夜中に突然やってきたのです。
「見間違いだったらいいんだけど、あれ、どこにある?」
母はピンときたようで、おばあちゃんの遺品を探し始めました。すぐに、いろいろなくなっているのがわかりました。
中でも問題だったのは、いわくつきの三つの品物がなくなっていたことでした。
ビスクドールのカトリーヌ(仮)、お守りのカメオ、さる貴族様から頂いたといういわくつきのブローチ。
この三つは、家や家人を守ってくれているもので、無断で持ち出したりすると災厄の固まりになるといわれていたのです。
ショップ旦那の話では、例の家族のママが、アンティークだと言ってそれらのアクセサリー類を店持ってきたそうです。
旦那はそれに気づいて、
「うちはアンティークはやってないけど。こりゃかなり値打ちものだよ。きちんと鑑定すればどれもすごい値打ちがある。ショップだと買いたたかれるからきちんと鑑定できる大きな骨とう品店とかに聞きに行ったほうがいい」
と簡単に売らないように牽制をしてくれたとのこと。
うちの家族は慌てて、ショップの旦那に駐在さんを呼びに行ってもらいました。そして問題の家に押しかけ、「うちから盗んだもの返せ!」と突っかかりました。
しかし、その家の母親は「何か証拠でもあるのか? 警察呼ばれたくなかったら帰れ!」と言い返してきます。
その時、廊下の真ん中にカトリーヌが座っているのを見つけたのです。
泥棒がばれた母親は「なんで、車のトランクに入れてたはずなのに!!」と唖然。
ちょうど駐在さんが到着したので、すったもんだの末トランクを開けさせると、あちこちから盗んだものが大量に出てくるではありませんか。
その場で母親は逮捕され、主犯と思われるママは子供たちを連れて行方をくらましていたので、すぐに捜索が開始されました。
なぜか、いわく付きのものは調書を取った後すぐ返してもらえたので、家の定位置に戻してあげました。普通ならすぐ戻ってくるとかありえないんだけど、たぶん駐在さんもこれだけはやばいと祖母から聞いていたのかもしれません。
そして翌々日、捜索中だったママと子供が遺体で発見されました。
車で隣県に行こうとしていたらしく、その途中の山道でがけから落ちて全員が亡くなったということでした。警察の話では、ママだけは発見されるまで約2日半生きていたそうです。
即死しててもおかしくないような大けがで、地獄の苦しみを味わっただろうということ。
その数日後、今度はその家が火事に遭いました。出火元はママの供養のために付けていた蝋燭。家は全焼し、出かけていた父親は無事だったものの、執行猶予で戻っていた母親は大やけどを負ったそうです。
その後、二人はいつの間にかどこかに引っ越していきました。
ちなみに、そのいわくつきの三点は、母が亡くなった時、遺言に従って一緒に燃やしました。
なんでも、「自分が逝くときに一緒に逝こう」と決めていたそうです。