大学時代、彼の車を借りて出かけていた時の話。結構夜遅くなってから、彼氏の家に向かうべく、よくわからない真っ暗な道を走っていました。
途中、工事中の看板を見かけたような気がしますが、あまり気にせずに進んでいくと、急に道が狭くなり未舗装の道に迷い込みました。 看板を思い出して、ああ、これのことかなと思っていたら、道は行き止りに。
一本道で周りは雑木林っぽくUターンもできません。 そこに後ろからヘッドライトを点けた車が入ってきました。
「あーあ、この人も知らないで走ってきちゃったんだな」
と思い、車から降りて行き止まりですよと教えようとしたら、車からズボンのベルトをはずしチャックを降ろしながら男が出てくるではないですか。
怖くて急いで車に戻り、キャーと叫びながら私は運転席と助手席の鍵をかけました。しかし、彼の車は荷台の鍵が外からしか閉まらない仕様になっていて、その鍵は開けっ放しになっている…。
ズボンを脱いだ男は、無表情な顔で運転席の外からドアをガチャガチャとしています。
姦される!いや、殺されるかもしれない!とにかく、荷台に回られたらおしまいです。
私はわけもわからず、ただ「いやあ!」と泣き叫んでいました。
それでもなんとか携帯を取り出し、震える手で110番を押します。とともに、電話をかけながら、車をバックに入れて発進させます。ガンっという音がして、車は男の車にぶつかって止まりました。
車をぶつけた!もう、脱出できない!
携帯は110番につながり、警察官の声が聞こえてきます。でも、錯乱状態の私はまともにしゃべることができません。
「車をぶつけた!怖い、怖いいよぅ。殺される…うわぁ、助けてぇ!」
電話口の警察官は冷静に「そこの住所はどこですか?」と聞いてきますが、私はただ、
「ここはどこぉー、わからない…ぎゃあ怖い!」
と叫ぶことしかできませんでした。しばらくして、ふいに男が車に戻っていきました。どうもぶつけられた車が気になったようです。
助かった……。放心状態の私は黙って電話を切ると、ガクガク震える手と足をなんとか動かしながら、やっとのことで車を運転し、彼氏の家までたどり着きました。 翌朝、私は激怒した彼氏に叩き起こされました。
「おい!車どうしてくれるんだ!!!」
一瞬、ぶつけたことかと思いました。でも、そんなに激しくぶつけたわけじゃなかったし、もともと15年落ちであちこちぶつけた箇所が修理もせずに残ってるような車です。なんで怒っているんだろうと思っていたら、彼が一言。
「窓に精○がぶっ掛けられてるだろーが! 汚ねーな。お前、すぐに洗車しろよ!」
私は車を洗車しながら、昨日の恐怖を思い出し泣いていました。あの出来事はいま思い出しても怖くて仕方がありません。