俺がまだ小学2年生の時の話です。ある日、熱が出て学校を早退してきた俺は二階の部屋で寝ていました。父は仕事、母は出かけていたため、家には誰もいません。
と、一階から物音が聞こえてきました。母ちゃんが帰って来たのかなと思って一階に行ってみると、そこには隣の家のおじさんが。手には包丁を持ってて、昼間に家にいる俺を見てびっくりしていました。
「おじさんがいたこと、内緒にしてくれるやんな?」
包丁に釘付けな俺は、むちゃくちゃ怖くてうんうんと頷きました。子供心に殺されるかもしれないと思い、親には何も話せませんでした。
それから月に一回、おじさんは沢山のお菓子を持ってくるようになりました。笑顔で「これ、食べや」って渡してくるおじさん。
なんでお菓子を持ってくるのかわかんなかったけど、おじさんの笑顔が怖くて、俺は毎回硬直してそのお菓子を受け取っていました。すぐ横で母が「この子、恥ずかしがり屋で……」と笑っていました。
先月、おじさんが亡くなりました。俺は、やっと自由になったと思いました。