中学生だった頃、俺はなぜだか周囲から浮いていました。友達はできても気が付いたらそんな関係は消えてる感じ。なんとなくいつも一人でした。
ある日の放課後、公園で一人ぽつんとブランコに座っていると、綺麗な女の人が「何してるの」って喋りかけてきてくれました。俺は「ちょっと一休みしてるんです」と答えました。
そこから話がはじまりました。その人は「悩みでもあるの」とか色々聞いてくれて、気がつくとなんとなくもやもやとしてた気分が晴れていました。
「門限になったからそろそろ帰ります」
しばらくしてから、そう言って帰ろうとすると、その人は「また来る?」と聞いてきました。俺は人のほとんど来ない静かな公園がまぁまぁ好きだったから、「多分来ます」とだけ言ってその日はそのまま帰りました。
次の日も、そのまた次の日も女の人は公園に居て、俺と話してくれました。俺は、同級生と居るよりもずっとその人と居るほうが楽しくなっていました。
話す内容は悩み事とか好きな食べ物の話とか別に普通のことばかりでした。でもそれが楽しくてたまりませんでした。
ところが、ある日を境にその女の人は突然来なくなりました。雪が降ってて、風が死ぬほど冷たい日だったから、さすがに今日は居ないのかな、と最初は思いました。だけど何日たってもその人は来ませんでした。
引っ越したのかと思ってその公園の近所をうろうろしてたら、偶然近所のおばさんがそばを通りかかりました。
「こんな所で何してるの?」
俺は最近ここに来ない人が居て、その人を探してるみたいなことを言いました。そしたらおばさんが「もしかしてそれ美人さんやったやろ?」って聞いてきたのです。俺はその人の特徴をおばさんにそれとなく伝えました。
おばさんは一瞬近所の様子を気にするようなしぐさをしてから小さな声で言いました。
「その人ね、多分そこの角に住んでた人やわ」
それからもっと小声になって後を続けました。
「その人、つい最近人を殺しかけて親戚に田舎へ帰されたんや」
おばさんの話では、その人は「よく話してくれる中学生ぐらいの男の子が可愛くてかわいくて仕方ない」みたいなことを言っていたそうです。そして、それぐらいの子を見ると可愛さのあまり首を軽くしめかけてしまっていたとのことでした。
それが理由で、親戚に「危ない」と判断され、田舎に帰されたんだとか…。綺麗でおだやかな人だったから、そんな事があったんだと思うと本当に怖かったです。